特集

車なしでも暮らせる尾道向島の玄関口/わたしの住む町「兼吉」

2021年家族で東京から尾道に移住した新間ミサです。今回はわたしが住む街、向島の「兼吉」地区をご紹介します。

尾道に移住したいきさつ

振り返れば学生時代から尾道の魅力に撃ち抜かれ、旅で訪れては住みたい気持ちを拗らせておりました。

出産と育児を機に、都内での人が多すぎる生活と家賃負担に限界を感じ始めて、本格的に移住しよう!と夫を巻き込み画策。行き先は思い入れのある尾道周辺一択、の決め打ちでした。

とはいえ在宅フリーランスの私はともかく、会社員の夫の仕事をどうするか?がネックになっていました。コロナ禍による怪我の功名・リモートワークへの後押しもあり、昨年夏の終わりに転職を経ての大移動。家族で住むには尾道側よりも向島が便利そうだったため島側へ。

島なのに不便じゃないの?という点については、後ほど詳しくご紹介しますね。

夫と娘の3人家族です

向島・兼吉に住むことになったいきさつ

私たちが住む物件

賃貸戸建/築50年くらい/5DK(二階建て)
家賃5万円台後半/プロパンガス、上水・電気・ネット回線(光)あり
下水なし(汲み取り簡易水洗トイレ)
渡船およびバス停からすぐ/スーパーまで徒歩3〜4分

移住を現実的に考えていた2020年の秋頃、兼吉にある貸別荘に家族で1週間ほど滞在してみました。当時向島についてはそこまでの土地勘もなく、住むならお店も多い北側かな…程度の認識でした。

しかし滞在中に内見に行った物件も偶然兼吉近辺にあり、周辺での生活がとてもイメージしやすかったのをよく覚えています。

コロナ禍の影響で移住の予定を数ヶ月遅らせ、秋に内見した家は既に埋まっていました。尾道側も視野に入れつつ探し回りましたが、結果、島側で見つかった唯一にして最も条件に適っていた家が今の住まいです。間取りと住環境、景色の良さなど総合判断でほぼ即決でした。

向島・兼吉の住宅事情

兼吉の丘付近から見える尾道水道

尾道大橋が出来る前、この辺りは島の玄関口であり、とても栄えていたそうです。昭和30年代頃にはあらゆる商店が集まっていて、芝居小屋や映画館もあったとか。

渡船乗り場からも程近く、今も尾道側との往来や買い物など大変便利なのですが、住民の数も減り、賃貸として出されているものは数件もありませんでした。

一方で向島への移住人気は高まっているため、あってもすぐ埋まってしまったり…。そんな中、タイミング良く条件に合致する物件が見つかったのは幸運だったと思います。

「向島モール」としてドラッグストア、大型スーパー、100円ショップが並ぶ他、ホームセンターも至近距離にあります

空き家や空き店舗はやや目立つのですが、売りに出したり賃貸として活用したり、という家主さんサイドの動きは少ないのかな、という印象です。

同じく移住してきた友人知人のケースでは、「人伝に家主さんを紹介されて、不動産屋には出ていない住居を貸してもらった」という話も耳にします。いわゆる古民家などは、そういうパターンが多いのかもしれません。

向島・兼吉の住みごこち

春の兼吉の丘から穏やかな海を行き交う船たちが臨めます

先述したように交通的にも買い物的にも利便性が大変高い地区です。尾道水道を至近で見渡せる景色の美しさ、そのすぐ向こうに見える千光寺も格別です。近くには「兼吉の丘」という、周辺の景色が一望できる絶景スポットも。春には穴場のお花見場所にもなり、大林映画のロケ地にもなりました。

近隣には昔ながらのサイダー&ラムネを製造している有名店「後藤鉱泉所」さんやフルーツパーラー、味と景色が評判のイタリアン、老舗のパン屋さん、個性ある喫茶店が数軒、ドラッグストアの他に地域密着型の薬局などもあります。のんびりした雰囲気と賑やかな尾道市街への近さが、とてもバランス良く両立している地域です。

老舗のサイダー製造店「後藤鉱泉所」

ご近所付き合いについて

近年は移住者やUターンも多く、観光客やサイクリストの往来がしばしばなことも影響しているのか?皆さんとても人当たり良く優しくしてくださり、地方にありがちとされる閉鎖感や閉塞感をほとんど感じません。 商業地区独特の空気なのかもしれませんが、さらりとした距離感が心地よいです。

ゴミステーション自治の関係で町内会への加入はほぼ必須ですが、必要な負担は年会費とごくたまに回ってくる簡単な清掃当番程度。お祭りや自主参加のシティクリーニングなど、程よく地域と関われる機会は楽しみでもあります。

数年ぶりに開催された、向島亀森八幡宮のお神輿巡行

向島・兼吉のよいところ

目を引く「ろ」の看板は、今や日本唯一と言われる船の「櫓」の職人さんの工房。兼吉のランドマークのひとつ

スーパーやドラッグストア、ダイソーも徒歩5分圏内にあり、特に子連れで住むにあたっては非常に助かっています。実際、ファミリーでの移住層は尾道側よりも多いように感じていますし、日常の買い物について島でほぼ完結するのは大きいです。

「尾道渡船」乗り場と、移設され残されている大林映画「あした」のロケセット(右)

尾道側への行き来は、尾道大橋(無料/通行は車がベター)の他に「尾道渡船」という片道100円の小さなフェリーで4、5分かからず可能です。仕事での往復も多いため、夫婦それぞれ定期券を購入しています。 島=車が必須、というイメージがあると思いますが、現状徒歩と自転車&渡船で暮らせてしまっているため、実は我が家には車がありません。(※今後行動範囲を拡げたいこともあり、今年はようやく私も免許を取って車を買おうか、とは計画しています)

向島・兼吉の不便なところ

渡船が22時までしか運行していないため、尾道側で夜遅くまで飲むことが難しいことでしょうか。運転役を確保して尾道大橋から帰るかタクシー利用か、尾道側で泊まるかという選択肢になってしまいます。向島側の歩ける距離にもっと居酒屋があれば!と、たまに周りの方と話しています。

また、粗大ゴミについては平日に車で島中央部にあるクリーンセンター持ち込みが中心になるので、そこは少々不便かもしれません。

まとめ:向島の兼吉がおすすめの人

向島の兼吉地区はこんな方におすすめです。

  • のんびりした生活と街の便利さをバランス良く取り入れたい方
  • ほどよい距離感でのご近所付き合いを望む方
  • 渡船行き交う尾道水道の美しさを毎日のように眺めていたい方

島に移住、というとハードルが高く感じる方も多いかもしれませんが、向島の北部…こと兼吉地区に関しては「ちょうどいい距離感」という言葉がピッタリ。 自然にも街の便利さにも恵まれ、徒歩や自転車での散歩も心地よい環境。

渡船から眺める四季折々の尾道水道は、何度カメラを向けても飽きることがありません。 <街や人から離れすぎない>暮らしをお考えの方に、特にオススメしたい地域です。

この記事を書いた人

アバター画像

新間ミサ漫画家/イラストレーター/デザイナー

京都市出身。都内に20年ほど在住ののち、出産育児を機に生涯暮らせる地について思案、予てより思い入れのあった尾道に念願の移住を果たす。
ノスタルジックな架空喫茶店をモチーフに文具やTシャツなど作る傍ら、向島近辺のお店とオリジナルグッズやラベルデザインなど共同制作、および販売中。insatgram