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尾道までそう遠くないのに自然の近くで暮らせる町/わたしの住む町「向島立花」

尾道駅から渡船で向島に渡り、最短距離で約6km。ちょうど尾道駅から正反対の場所に位置する立花という地区は、海の向こうにお隣の因島が見えます。

公共交通手段は1日6本のバスのみ。歩くと約2時間もかかるので車が必須。決して便利とは言えないにもかかわらず、ここ数年で移住者が増え続けています。

そんな立花に移住したのは2021年2月頃。埼玉県で生まれ、東京や大阪という便利な場所で働いていたわたしが住む町「立花」を紹介したいと思います。

向島の「立花」に移住したいきさつ

向島に住むライターの中鶴果林です。

新卒でいわゆる「大企業」と呼ばれる会社に入社し、法人営業として東京の新橋で4年ほど働いていました。結婚を機に夫の職場がある静岡県に引っ越し、1年ほど新婚生活を送りました。

2020年には思い立って夫婦でカナダに渡航し、パンデミックに巻き込まれながらも、スケールの違う大自然の中でアウトドアを楽しみながら現地のカフェで働いたことは一生の経験になりました。

立花のベストスポット・高見山山頂の展望台から

2021年の2月に帰国し、夫の実家に一時滞在をしたのが向島でした。そう、私の夫は向島生まれなのです。

カナダ暮らしを経て、経済的豊かさよりも精神的豊かさを大切にしたいという思いが芽生え、移住先の候補として考えたのが北海道や長野など。しかし、しばらく過ごすうちに向島に魅力を感じるようになり、気づけば空き家を探す日々が始まっていました。

わたしのお家

空き家探しから2ヶ月ほどで、ご縁があった築70年前後の木造古民家を譲っていただくことになりました。30年ほど空き家でしたが、元々の造りがしっかりしていたので「少し手を入れればすぐに住めるようになるだろう」と思っていました。

会社を辞めて海外に行っていたので住宅ローンが組めず、できる範囲でセルフリノベーションをすることになりました。2021年5月頃から本格的に着手し、2022年12月現在、ようやく家で人並みの生活を送ることができています。

写真左/畳を剥がして床の基礎を作る工程が一番大変でした。約60畳分の床を自分たちで貼り終えた時の達成感は忘れられません。

基礎のガタがきている部分を補修し、全室畳だったところをフローリングに張り替えました。壁には漆喰を塗り、最近は庭にウッドデッキを作りました。詳しくはYouTubeに動画を投稿している(※)ので、観ていただけると嬉しいです。

※記事末プロフィールにリンクを掲載

家を見つけたいきさつ

立花は「高齢化が進み、空き家が増えている」と聞いていたので、家の近くを歩き回り、ご近所さんにお話をすることから始めました。しかし、なかなか「売ってもよい」という物件には出会えませんでした。

最終的には、夫の実家の近くにある、長年空き家だった持ち主の方にご連絡し、直接お話をさせていただきました。管理ができずちょうど手放したかったというタイミングで、お譲りいただくことになりました。

立花での家探しについて

向島の中でも別荘地的なエリアで移住者も増えつつある立花ですが、インターネット上に出回っていない物件も多く、家探しは難しいと言われています。実際に住んでみて思うのが、空き家はあるけれど、そのままになっている住宅が多いということ。

不動産屋さんに出ていない物件も多いと思うので、迷惑にならない程度に近所の方に聞いてみることをおすすめします。

立花の住みごこち

立花は海からほど近い場所にある家が多いので、毎日違う朝焼けや夕焼けを見ることができたり。思い立ったらSUP(下写真)やカヤックができたり、釣りに出かけたり、自然と近い暮らしができます。

徒歩圏内にコンビニやスーパーがないのは少し不便ですし、夜20時頃には真っ暗になり夜のお出かけが億劫に感じることはありますが、それが当たり前だと思えば案外暮らせることに気づきました。最近は夜に自宅の庭で焚火をしながらお酒を飲むことが日課になっています。

立花のご近所付き合い

夫が生まれ育った場所なので、顔馴染みのご近所さんが多いです。とは言え、私にとっては全く知らない土地なので、移住したての頃は、「○○くん(夫)の奥さん?」「久しぶりじゃねぇ」と声をかけていただいたり、古民家リノベーションをしていることを知って声をかけてもらえることは嬉しかったです。

また、家庭菜園をしている方から大量に野菜のお裾分けをもらったり、古民家で不要になった畳を柑橘畑に敷くからと引き取っていただいたりと、小さな町だからこそ顔の見える付き合いができるのは立花の特徴かもしれません。もちろん移住者の方も多いので、同じ移住者どうしお話をしたりと心強い部分もあります。

立花のよいところ・不便なところ

お正月には夫の祖母が好きだったという着物を着て記念撮影をしてみました。

立花のよいところは、尾道まで車で20分程度と便利な場所でありながら、海が近く自然と近い暮らしができること。また、尾道と向島には無料の橋がかかっているほか、渡船もあるので、島だけど島というほど不便ではない暮らしが実現できます。私は出張に行くことが多いのですが、新幹線の停まる新尾道駅や広島空港までも車で40分以内なので、そこまで苦には感じていません。

一方で、車がないと生活できないのは少し不便な点です。東京にいた頃は公共交通機関にお世話になりペーパードライバーだった私も、向島に移住して否応なしに車を運転するようになりました。でも、交通量は多くはないので、移住してから車の運転を練習すればなんとかなると思います。

まとめ

移住して2年が経ちますが、東京に帰りたいという気持ちを感じたことは一度もなく、自然と近い暮らしが私には合っていると感じています。 個性的なお店が多い尾道の中心街までは自転車でも行けますし、新幹線や飛行機という公共交通機関へのアクセスも1時間程度で完結しながらも、「ザ・島暮らし」を満喫できるのが立花の良いところ。

島暮らしに憧れがあるけれど、定期的に飲みに出かけたり、県外に出かけたりする暮らしも続けたい人にとってはおすすめの町です。

 

この記事を書いた人

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かりんライター

結婚後、夫婦で会社を退職し、ワーキングホリデービザを使ってカナダで生活。帰国後、譲り受けたことをきっかけに夫の出身地である向島に移住。古民家セルフリノベーションの様子はYouTubeに投稿中。
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