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支援企業1300社超!尾道からJリーグを目指す広島ユナイテッドFCの挑戦
尾道発のサッカークラブで、広島県から第2のJリーグ入りを目指す丸山富洋さん。サッカーとともに歩んできた丸山さんの理想は壮大です。人生をかけた挑戦への熱い想いを聞きました。

丸山富洋(まるやま ふみひろ)さん

広島ユナイテッドFC尾道 代表兼監督
広島県出身。2021年に自身で立ち上げたクラブを監督として引率。現役選手時代のポジションはディフェンダー。

尾道の小さな公園から始めたサッカークラブ

 

広島ユナイテッドFC尾道の選手たち

 

ーー丸山さんが監督を務める「広島ユナイテッドFC尾道」は、いつ設立されたんですか?

2021年1月です。設立以来順調に勝ち上がり、今年は広島県リーグ2部に昇格しました。真剣にJリーグを目指す姿勢を示すため、今年の5月に法人化しました。

ーー実力を付けながら、順調に勝ち上がっているんですね。丸山さんが尾道でサッカークラブを設立した理由は?

数年前に息子が尾道のサッカークラブにお世話になることになり、家族で尾道に移住しました。息子を通してご縁をいただいた尾道にサッカーで貢献したいと思い、ここ尾道でクラブを設立しました。

ーー最初はどんな形でのスタートだったのですか?

最初はお金が無いので芝生のグランドなど借りられず、公園で練習していました。ゴールなども無く、近くでゲートボールをしている方々から、区画を分けてもらう所からスタートしました。

現在は、”東尾道多目的グラウンド”で練習させてもらっています。ゴールもあり、人工芝の整備された施設で、安く借りられるのでありがたいです。選手の住居もクラブで借りて、サッカーに打ち込める環境を徐々に整えています。

支援企業1300社を超えた今も毎日の営業は欠かさない

写真左/1300社以上の支援企業名が連なるクラブのポスター
写真右/多くに方にクラブを知って貰うため、練習の合間に監督も広報活動を行います

 

ーーもともとゆかりのなかった尾道で、設立後数年で1300社超の支援企業を集めているのは驚きです。

尾道は地域企業同士の横のつながりや結束力が強く、有難いことに支援企業様からの紹介で新たなご縁をいただくことも多いんです。
もし拠点が尾道でなければ、今のように多くの方から力強い応援をいただけるまで、もっと時間がかかっていたと思いますね。

ーー肌で感じるところがあるんですね。これだけ多くの広告を、どうやって集めたんですか?

とにかく直接お願いに伺いました。本当にお金が無かったので、移動は徒歩か自転車です。
私と選手数人で三原や福山まで、1時間以上自転車をこいで行くこともありましたよ。到着する頃には汗だくです。

ーー地道に頑張ってこられたんですね。最初はやっぱり大変でしたか?

それは勿論!ゼロからサッカーチームを作ってプロ入りなんて無謀ですから。普通の人はまずやりませんよ。
それに、サッカーをするのに必要なご支援を募るからには、全部をさらけ出す覚悟を持たなければなりません。
駆け引きなしで熱意を伝える!今でも毎日覚悟を持って営業活動をしています。

ーー毎日営業活動をされているんですか?

はい、自分は常に広告塔だという自覚を持ち行動しています。そもそも休む必要がないんですよ。サッカーにおいては「休みから学ぶものはない」と思っていますし、プロを目指すからには、生半可な心づもりでは成し遂げられません。全精力を注いでやり続けるしかないんです。

それに、新たに広告をいただくだけでなく、2年、3年と広告を継続してもらうことが私たちの生命線です。私を含め、選手一人ひとりも営業マンとして、営業活動を行なっています。

ーー選手自身が営業マンとして出向くんですね。

「サッカーで尾道に貢献したい」というクラブなので、目に見える形で活動することを大切にしています。メールや電話ではなく、直接会って伝える事を大切にしたいと思いますね。

 

嘘偽りない姿勢で継続していくこと

ーー丸山さんの語り口からは、強さや熱さが伝わってきます。その原動力は何なのでしょうか?

私はもともと一人っ子で。幼少期は過保護に育てられ、甘えて文句ばかり言っていましたね。

サッカーの道を志す様になり、すぐに自分の甘さを思い知りました。
「ここで踏ん張れなかったら終わり」と思い食いついた経験は大きいと思います。

その後、監督としてサッカーに携わるようになり、選手に少しでも金銭的な援助ができればと、浅はかな行動をしてしまったこともありました。
今思うと、がむしゃらになるあまり何でもありだったんですね。軽率だったと思います。

営業活動では、こうした過去もすべて話した上で支援の判断をしていただいています。今の時代、検索すれば何でも出てきますので。

ーー全てさらけ出して、分かってもらった上で応援してもらうんですね。

嘘偽りなく、真実だけでやっています。だから言い返せるし、負けません。強い姿勢とオープンマインドで、どこまでいけるかぜひ見ていてほしいです。絶対にやりますよ。

ーー実際に、さまざまな町おこしや地域貢献活動の実績も積み上げられていますよね。

設立当初から、地域のごみ拾いや廃品回収に参加しています。今は、スーパーや商業施設のイベントに参加したり、ビラ配りや樽募金を行ったりするようになりました。尾道市内では、外国人選手との国際交流を兼ねたサッカースクールを定期的に開催しています。世羅町とも提携して、サッカースクールを行っています。

とにかく覚えてもらうため、「尾道にこんなチームがあるんだ」と知ってもらうために、できる限りのことをしています。

尾道に「本物」のプロサッカーチームを作りたい

 

『ゴミ拾い活動』での一コマ。自分たちに出来る地域貢献を考え日々行動。

 

ーークラブの将来について、どのように考えていますか?

尾道にプロスポーツチームができれば、地域が元気になりますし、観光客だけでなく地域の方への経済効果も大きいと考えています。子どもの見本という意味でも、大きな存在になれればいいですね。Jリーグ入りには5000人以上が入るスタジアムが必要で、建設するなら行政の協力も必要不可欠です。「本物」のクラブを目指し、勝ち上がって機運を高めなければなりません。

ーー丸山さんはSNSでもよく「本物のクラブ」という言葉を使われていますよね?その真意とは?

Jリーグ入りのためにすべきことをして、地域のみんなに応援し続けてもらえるクラブが「本物」だと考えています。地域の一部となり、試合を見に行けばエネルギーをもらえる。そんなクラブになりたいですね。

理想は、長野県の「松本山雅FC」です。老若男女みんなが試合を見に行くし、みんなが応援しているから成績によって倒れることもない。本物の町おこしクラブだと思いますよ。

松本山雅FCの社長とは、一緒にサッカーをした旧知の仲です。そんな仲間が頑張っていると刺激になるし、エネルギーをもらっています。

 

最短でのJリーグ入りを目指して走り続けます

 

ーー今後のチームのロードマップを教えてください。

現在は広島県リーグ2部ですので、昇格できれば来年2025年に広島県リーグの1部に参入します。そこで勝ち上がれば、2026年には広島・岡山・鳥取・島根・山口の代表が戦う中国リーグ。そこでさらに勝てば、2027年に全国リーグ(JFL)に参入。これが最短のシナリオです。

全国リーグに昇格するかどうかの入れ替え戦が鬼門で、Jリーグ入りするよりも難しいといわれているんです。
通常は次の試合まで1週間ほど時間を空けるのですが、全国リーグ昇格戦は3日連続で試合をするんです。自分も現役選手時代に経験しましたが、リカバーが追いつかず、それはそれは壮絶な戦いになります。
選手の脚が持たず、つまづくチームがとても多いんですよ。この戦いを制すためには、
選手をそろえること、戦い方、選手のターンオーバーなど、勝つためのシナリオを組むのが監督としての腕の見せ所ですね。

ーーANCHER編集部一同、全力で応援しています!最後に一言お願いします!

2024年現在、広島からJリーグ入りしているのはJ1のサンフレッチェ広島だけです。広島ユナイテッドFC尾道は、広島から2つ目のJリーグ入りを果たします。
必ずやり遂げますので、見ていてください。ぜひ応援よろしくお願いいたします!

 

広島ユナイテッドFC尾道

公式ホームページ

この記事を書いた人

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福島 彩香ライター

2015年に愛媛から尾道へ移住し、2022年よりライターとして活動開始。高台から見下ろす尾道の風景や多島美が好き。やんちゃな息子の育児に慌ただしい日々を満喫中。