ロンドン生まれの究極の折りたたみ自転車“ブロンプトン”に乗って、尾道市街を散策するツアーで『まちづくり』!
体験型のツアー事業を2023年に立ち上げた松村健志さん。
山口県出身で、広島市から尾道に移住した松村さんに尾道で仕事をつくるヒントを聞きました。
松村健志(まつむらたけし)
1994年生まれ/山口県出身/「合同会社ファンまち」代表
2023年7月、尾道へIターン移住し、同年11月に尾道で起業。
東京から広島へ。1年間の出向が転機に
ーー松村さんがまちづくりの仕事に関わり始めたきっかけは?
大学卒業後、全国の地域ブランディングに携わる会社に就職したことですね。
当時は東京でブランディングやコンサルティングに関わってきたんですが、転機となったのは2019年、瀬戸内7県の観光マネジメント組織「せとうちDMO」へ1年間、出向したこと。
僕自身は地元が山口県で、出向中に東京から広島市へ移住し、中四国地方の仕事を中心に担当しました。
ーー出向がきっかけで広島との縁が深まっていったんですね。ブランディングやコンサルティングの仕事って?
簡単にお伝えすると、さまざまなお困りごとを抱えた地域の方々からの相談を受けて、「こういうことをしてみたら地域がより良くなっていくのでは?」と提案すること。
僕自身は、観光コンテンツの造成、Webや紙媒体での情報発信、ファンベースマーケティングなどを主に担当していました。
ただ、その後、実際に動いて地域を良くしていく「プレイヤー」となるのは、当事者の方々なんですよね。僕ら自身はあくまでも「伴走役」。提案後、その先にもずっと関わっていけるわけではないんです。
ーーえっ!? そうなんですか。コンサルティングのお仕事って、最初から最後まで、みたいなイメージがありました。
もちろん、担当する事案には一生懸命、取り組みますよ。
でも、提案した内容がうまくいくかどうかとか、地域にしっかりとインパクトを残せるか、という根幹に関わる動きは、地域コンサルティングの仕事としてできる範囲にどうしても限界がある、っていう葛藤が正直ありました。
僕自身は、その葛藤を抱えながら地域のお困りごとに向き合ううち、「だったら、自分がプレイヤーとなって、まちづくりにもっと深く関わりたい」という思いがどんどん強くなって……。
いずれ独立して自分でまちづくり事業を立ち上げたいと考え、5年間勤めた会社を2022年の秋に退社、個人事業主として仕事しながら「合同会社ファンまち」起業の準備を始めました。
地域ブランディングのあり方を、尾道から問いかけたい
ーー確かに、その葛藤があるからこそ、自分がプレイヤーになって仕事できたら楽しそうですね! 松村さんが尾道を起業の地に選んだのはなぜ?
前職では、広島西部を中心に担当していたので、尾道のある広島東部に縁があるわけではなかったんです。
でも、とある知人に起業のことを話したところ、「尾道のまちづくりを飲食を通じて牽引してきた社長を知ってるから、一度会いに行ってみなよ」と繋いでもらい、尾道まで会いにいきました。
尾道に来てみて感じた、まちとしての個性の強さ、なにより、その社長さんのまちに対する情熱に心を動かされ、「ファンに愛されるまちづくり」を展開するなら、尾道がぴったり!だと思ったんです。
ーーへぇ! ファンに愛される、って具体的にはどんなことをするんですか?
根底には「ファンベース」という考え方があります。
簡単に言うと、ファンからの支持基盤を築くことで、ファンに愛され、応援されるマーケティングの考え方です。時代の進歩であらゆるサービス水準が高く均一化してしまった現代、ファンの支持がないサービスは埋もれて淘汰されていきます。また、“2割のコアファンが8割の利益を生んでいる”という「パレートの法則」は有名ですよね。
これって、まちづくりも同様なんじゃないかと思ったんです。たとえば尾道にも、地元愛を持って暮らし続ける人、観光で何度も訪れる人、好きすぎて移住しちゃった人……と、さまざまな形の“ファン”がいると思うんです。
不特定多数ではなく、そんな尾道ファンに向けた街のインフラやサービスをつくること、それがこれからの未来、大事になってくると考えています。街と人のマッチング率を高めるイメージでしょうか。
ーーなるほど。ちなみに「街と人のマッチング」って、たとえば、街を好きになってくれる「ファン」を見つけて、より好きになってもらう取り組みをしていく、という事ですか?
いえ、僕が考えるのは逆で、ファンが先、じゃなくて、まちづくりが先。
その街の魅力を高め、より厚く支持してもらえるようなコンテンツや仕掛けを街の側で用意しておくのが大事、というスタンスです。
その一つとして、観光客向けに行っているのが自転車ツアー事業です。
新開をめぐる自転車ツアーで「まちづくり」
ーー自転車ツアーでまちづくり!?
そうなんです。
しかも、サイクリングツアーのスタート&ゴール地点が、尾道市街でも特にディープでおもしろい”新開エリア”なんです。
でも、それこそが僕のこだわりで、ツアーの拠点としている「SIMA salon」も、かつては老舗の高級クラブ「クラブ志摩」だった場所で、尾道の歴史や街のおもしろさを深堀りするのに最適だったりします。
ーー今日の取材もこちらのサロンでさせていただいていますが、空間に漂っているオーラが街の歴史を感じさせて、味わいのある内装ですね。
いろいろ知りたくなるでしょ?(笑)
そういう尾道ならではな場所を、ガイドから歴史ストーリーを教えてもらいながらサイクリングするうちに「尾道、ええなぁ!」と感じてもらいたい。
「またこの街を訪れたい!」と思ってもらえるような仕掛けを作るのが、「ファンまち」のツアー事業の仕事です。
現在は、尾道市街を折りたたみ自転車で散策するツアーと、瀬戸田の高根島を起点にしたシーカヤックとEバイクのツアーの3つを展開しています。
“ストーリー”のある体験型ツアーに学ぶ
ーー「まちづくり」というと、新しい建物を作るとか、エリアを再開発するとか、っていう先入観があって、「自転車ツアー」もまちづくりになるっていう発想は松村さんのお話を伺うまで、あまりもててなかったです。松村さんのビジネス観に影響を与えた人って?
自転車ツアーがまちづくり、という考え方に大きな影響を与えてくれたのは、広島市内でストーリー型サイクリングツアー「sokoiko!」を運営する石飛さん。
前職時代に伴走支援を行ったのがきっかけで出会ったんですが、世界的クチコミサイト「Tripadvisor」で全国3位にランクインするなど、いまでは大人気のツアーに成長しています。
石飛さんと一緒にツアーの造成から販売までを経験したことで、ツアー事業を作るにあたって大切なことを学ばせてもらいました。
ーー最後に今後の活動について一言お願いします!
今年5月で諸々が落ち着いて、6月末からようやくサイクリングツアーを本格始動できました。
「SIMA salon」はレンタルスペースなんですが、いまは僕を尾道に誘ってくれた社長さんからその運営を任せてもらっています。これからは、さらにサイクリングツアー拠点のほか、コワーキングスペース、カフェ&バー、そして音楽ライブなどのイベントも展開していきます。
尾道をもっと好きになってもらえるまちづくりに取り組んでいきますので、ぜひ一度遊びに来てください!
取材日:2024年6月25日
聞き手:杉谷紗香/ライター(piknik)
合同会社ファンまち
松村さんおすすめのお店:中華せとだ
瀬戸田の事業に携わるようになって以来、何度も通っている町中華。
何を頼んでもおいしいですが、僕のお気に入りメニューは”焼きそば”です!
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